コラム)イ・ヨンフンの「新羅時代から、反日が始まった」論の源を考察する

 

 

イ・ヨンフンは『反日種族主義』の中で、次のように述べている。

ふつうの韓国人は 、 日本に対し良い感情を持っていません.不快な 、 あるいは敵対的な感情を 持っています。それは長い歴史の中で受け継がれて来たものです。私は七世紀末、新羅が三国を 統一したときからそうなったのではないかと考えています。(p201「17、反日種族主義の神学」)

 

 

f:id:horikekun:20200920000812p:plain

 動画「反日種族主義の神学」から

 

 

彼らが「反日種族主義」と呼んでいるものの起源について述べているのだが、「七世紀末、新羅が三国を 統一したときからそうなったのではないかと考えています」と言いながら、なぜそう考えるのかは明らかにしていない。

実はこれとほとんど同じ事を日本の国粋主義者も述べている。

例えば、拳骨拓史は『韓国「反日謀略」の罠』や『「反日思想」歴史の真実』で、「韓国はいつから反日か?」と問いかけ、その答えとして「朝鮮人が日本を軽蔑し、怨敵視する風潮は、新羅時代までさかのぼることができる」と書いている(『韓国「反日謀略」の罠』p171)。

拳骨によれば、それは「日本に捕縛された宰相が、死んでも日本の部下になる事を拒絶した話」が「おとぎばなしのように子供たちに語り聞かされた」からだという(グーグルブックス)。

books.google.co.jp

当時の新羅の人が日本の手下になる事を拒んだとしてそれがなぜ「日本を軽蔑し、怨敵視する風潮」になるのかはさっぱり分からない。外国の支配を受け付けない自主独立の気風の現れでしかない。ゆえにこれはコジツケだろう。

 

反日種族主義』はこういったものに無条件に影響を受けているのではあるまいか?

すでに、西岡力秦郁彦、岡田邦宏らに影響を受けている事を言及してきたが、ここで拳骨拓史の名前も出てきたので、拳骨のプロフィールを簡単に説明すると、拳骨は名越二荒之助の弟子であり、産経新聞社傘下の扶桑社から、既述の『韓国「反日謀略」の罠』や『「反日思想」歴史の真実』それから『日中韓2000年の真実』などを出している。

言うまでもなく、産経新聞社の月刊誌『正論』やWACの『歴史通』、PHP研究所の『voice』等に複数の文章を書いている。『韓国人に不都合な半島の歴史』はPHPから出ている。

著作にはかなりの数の参考文献が挙げられているが、ヒモ付けされていないので、どの部分が何に根拠を置いているのかは分からない。検証可能性を満たさない右派の価値の低い著作物の一部である。