コラム)「反日民族主義」という言葉は、いつ誰が造り、どのように広まったか?

 

落星台(ナクソンデ)経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)研究委員が代表を務める団体に、「反日民族主義に反対する会」というのがある。産経新聞の名村隆寛記者によると、韓国では「売国奴」と呼び声も高い団体らしい。

https://bunshun.jp/articles/-/19618?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=socialLink

 

この「反日民族主義」という言葉。一体誰が作ったのか?

興味があったので調べてみる。すると以下の事が分かった。

まず新聞を横断的に調べてみる。

すると産経新聞の2002年1月6日の【談話室】に「戦後の歪みが日韓間に影響」という題名の記事があり、これに反日民族主義」という言葉が使われている事がわかった。これを書いたのは会社役員という触れ込みの松本元敦という人だ。

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   (後略)

 

読めば分かる通り、呉善花(オソンファ)が『月刊正論』の2002年2月号に、「日韓関係を歪め続けた『きれいごと主義』」という文章を書いているという。

「戦後の韓国は反日民族主義をあおる政治家やマスコミなどが 日本統治に協力した知識人に売国奴の汚名を着せて、国民を日本帝国主義の犠牲者に仕立てた」という内容らしい。

 

さっそく確認してみる。

するとわずか、11頁しかない論文に11か所も「反日民族主義」という言葉が見つかった。

 

(一部抜粋)

 

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呉善花にとって反日民族主義という言葉はよほど使い勝手がよかったのだろう。この著作以降、様々な著作で大量に使うようになった。「反日民族主義」という言葉の伝道者になったらしい。

かなりデタラメな歴史を述べている2006年の 井沢元彦との対談本『やっかいな隣人 韓国の正体 なぜ反日なのに日本に憧れるのか』 (祥伝社 )でもp265、p285等(祥伝社黄金文庫)で使っており、2013年の『なぜ反日韓国に未来はないのか』でも数多く使っている。

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(『なぜ反日韓国に未来はないのか』2013 呉善花)

『反日種族主義』批判ー「反日」という言葉の調査 - 『反日種族主義』検証サイト

↑ここでも多少言及

 

反日民族主義」は植民地体験によるものではなく、歴史を捏造して造ったものだという。

韓国の歴史教科書の記述は、正確性の点では問題部分もあるがおおむね正しい民族の記憶に基づいている。

呉善花歴史修正主義の大御所とも言える渡部昇一に強く影響を受け、井沢元彦櫻井よしこらと対談しながら、こうした理屈を造ったようだ。呉善花に続けとばかりに産経新聞には「反日民族主義」という言葉を使った記事が多くある。

 

イウヨンらは別に呉善花の弟子というわけではないだろう。

だが、確実にその影響を直接、間接に受けているのである。

 

 

余談)

田中 明には「韓国の民族主義と反日 」という著作がある。『海外事情 』1982-04に掲載された論文で、これは「反日民族主義」という言葉ではないが、いわば先駆けのようなものだ。田中 明は、佐藤勝巳や西岡力らが編集していた『月刊誌 現代コリア』の常連執筆者であり、将来まとめようと思っている「日韓請求権協定歪曲解釈の歴史」の登場人物になる予定である。