はじめに
『反日種族主義』の検証サイトです。
ニューライトと呼ばれていた経済史学者である李栄薰(イヨンフン)前ソウル大学教授はソウル大学を退職後、「李承晩学堂」と「李承晩TV」を設立した。「李承晩TV」は2018年12月からyoutube動画で講義をはじめ、2019年4月からは日本語字幕付動画を配信しはじめた。
*著作『反日種族主義』日本語版序文によると韓国語版の企画段階から、産経新聞の久保田るり子記者が日本語版出版の提案をしていたという(p4)。『反日種族主義』の出版をいつ企画したのかは知らないが、おそらく「李承晩TV」に日本語字幕を付け始めた時から、すでに日本人を読者に想定していたものと思われる。それにしても産経新聞との結びつきの強さが伺われる話である。
その久保田は『正論』 (576) 2019-10 p.35-40に「朝鮮半島薮睨み 特別版 「反日種族主義」こそ韓国の危機の根源だ (大特集 病根は文在寅)」という文章を書いている。
産経新聞の韓国駐在員・黒田 勝弘ももちろん、その前宣伝に加担している。
①『「反日種族主義」と私は闘う : 慰安婦問題を放置すれば大韓民国は崩壊する (日韓相克 : 終わりなき"歴史戦"の正体)』李 栄薫,黒田 勝弘
掲載誌 文芸春秋 97(11) 2019-11 p.108-114
②『側近・曺国(チョグク)追放で保守陣営に勢い 文在寅 「反日」で悪あがきするも限界へ : 慰安婦や徴用工で日本の立場を支持した本が韓国でベストセラーになって』
黒田 勝弘 掲載誌 Themis / テーミス [編] 28(11) (通号 325) 2019-11 p.50-51
③『日韓断絶の元凶 ついに韓国の歴史家が決起した! 「反日種族主義」を追放せよ』
金容三 鄭安基 朱益鍾 黒田 勝弘
掲載誌 文芸春秋 97(12) 2019-12 p.94-105
こうした前宣伝があって、『反日種族主義』が2019年7月10日韓国で発売されると10万部超えのベストセラーとなり、11月15日には日本語版が発売され、すぐに40万部を超えるベストセラー化している。
*韓国人の名前は読みやすさを考え、できるだけカタカナで表記するつもりである
『反日種族主義』は、今日の日韓間の外交的冷え込みの原因を韓国側に求めている。韓国人の「反日種族主義」が歴史を捏造しているのだという。こうした主張は、「慰安婦」問題等で、随分昔から産経新聞等が唱えてきた主張であり、最近では「韓国の国内問題」などというフレーズも見られる。
韓国の歴史教科書や学説、新聞記事などが全面的に正しいわけではないのは当たりまえだろう。しかし、私の見たところ、この『反日種族主義』の示す歴史認識の方がはるかに歪んでいる。イ・ヨンフン氏の慰安婦論の多くの部分が秦郁彦氏の著作に依拠し、その間違いまでも無条件に鵜呑みにしている。イ・ウヨン氏の方は最も影響を受けているのは、モラロジー研究所の西岡力氏と産経新聞だろうが、日本政策研究センターの岡田邦宏氏や藤岡信勝氏の影響もみられる。
チョンヘギョン氏に反論されて、造った動画『「強制徴用」、「強制動員」を否定したという批判について』で、日本政策研究センターの機関誌『明日への選択』の岡田邦宏氏の論文を引用するイ・ウヨン氏 ↑
また日本会議の松木国俊氏たちと共同行動し、費用を出してもらって国連に行き演説している。松木国俊氏は日本会議調布支部の一員であり、「新しい歴史教科書をつくる会」の一員でもある。日本会議の慰安婦問題否定論の冊子『「従軍慰安婦」強制連行はなかった』の制作者でもある。
要するに、イ・ヨンフン氏たちは韓国の民族主義を、日本の民族主義(右翼思想=国粋主義、神道主義、国家主義)の論理によって批判しているという不思議な構図になっている。「反日」という言葉自体が、日本の右派やネトウヨの多用する言葉である。
本サイトは、彼らが「歴史事実」と呼ぶものを徹底的に検証し、必要なら批判していくことを目的としている。
(以下、当サイトでは敬称を略す)