労務動員について知っておくべき基本事項と基礎資料5 逃走関係資料 

 

         逃走について

 

外村大は『朝鮮人強制連行』(p157~p158)「逃走」につい 一部抜粋

「契約期間満了時に職場にいた朝鮮人については無理やり契約更新を強要するにしても、かなりの部分が契約期間満了以前に逃走していた。日本内地への朝鮮人送出開始から一年後の1940年9月の調査でも、送出者数65344人の18.5%にあたる12071人が逃走していたことが総督府の会議で報告されている。逃走者の理由別内訳は、誘惑19.8%、恐怖17.7%、計画的渡航12.4%、都会生活憧憬6.6%、待遇その他不平7.1%、転職4.9%、その他31.4%となっている。」

「逃走に対しては企業側も様々な対策を講じたが、その数は減少しなかった。」

「こうしたなか、警察当局は1942年8月から9月にかけて、日本内地の事業場で就業中の朝鮮人(動員計画以外の渡日者含む)64万3416人を対象に協和会員章チェックによる、逃走者及び密航者の摘発を行っている。そこで発見された協和会員章不所持者は68468人であり、うち労務勤務先からの逃走者と判明した者は6098人であった。しかし、実際には逃走者であることを隠しとおした者や一斉調査自体を逃れた者も相当いたと推測される。というのは警察当局による動員された朝鮮人の「現在調べ」では逃走者数はこれより多数なのである。1943年末時点の「現在調べ」では朝鮮人の「移入者」数36万6464人中逃走者が11万8735人、したがって逃走率は32.4%に達していた。」

 

 

 

 

          逃走は労務調整令違反

 

 

 

 

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労務者が逃走すると警察が捉え、送局した。

一体どんな法規に基づいて起訴したのか?不思議だったのだが、下の資料(『特高月報』)によれば、労務調整令第二条違反として送局したようだ。他企業に引き抜きを取り締まっただけではなく、逃げた者も労務調整令第二条違反としている。

しかし罰則規定の無いこの労務調整令第二条によっていかなる罰が与えうるのだろうか?

もっとも戦前の暴力的な警察のやり口から考えれば、処罰を受けなくても、留置場に入れられ、時には拷問を伴う取り調べを受けること自体が大きな苦痛ではあったであろうが。

 

44年

 

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在日朝鮮人関係資料集成第5巻』より

 

 

国家総動員法に依る戦時労務統制関係法規の一つとして労務調整令がつくられたわけだが、労務調整令で罪を規定し送局するということは、当時の警察にとって労務動員の人員は国家総動員法に依る動員としてとらえられていたという事だろう。

 

 

 

 

      逃走理由

 

 

最も大きな逃走理由は「坑内作業への恐怖」である。

 

逃走原因表

 

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