反日種族主義批判「イ・ヨンフンによって歪曲される」慰安婦のイメージ 1「楯師団の慰安婦、文玉珠」「強要と自発的」

 

 

イ・ヨンフンの講義『楯師団の慰安婦、文玉珠」』という動画を見た。

これである。https://www.youtube.com/watch?v=3siNUCt4pXg

 

 


11. 楯師団の慰安婦、文玉珠

 

文玉珠さんの『ビルマ戦線楯師団の「慰安婦」だった私』を題材に慰安婦の生活や待遇を説明しているのだが、いろいろな部分を歪曲し、強引な結論を述べている。

 

 

酷いものをつくるものだ。

読んでいない人のために説明しようと思う。

 

 

 

          1、友達に比べて文さんだけが、大金を持っていた

           ことを無視するイ・ヨンフン

 

イ・ヨンフンは文玉珠さんが大金を稼いだことを述べている。

 

しかし、第一に「(経営者の)マツモトはお金をくれなかったこと」

第二に、人気者だった文玉珠さんは、チップをためてお金を持っていたが、他の慰安婦にさせられた女性たちがお金を持っていなかったこと・・・は無視している。

 

文玉珠さんによれば、

「私の手元には少しづつもらったチップが貯まって大きな金額になった。友達に比べて私だけが、大金を持っているのは、都合が悪い」

という。

 

この部分である。

 

 

 

 

この部分は、なぜ文玉珠さんが貯金をしたのか?その理由と通帳を造った経過を述べているのである。文玉珠さんによると、宴会に出かけてチップを貯めると金額が大きくなったが、友達はそんな大金を持っていない。そこで兵士の給料を野戦郵便局に貯金していることを知っていた文さんは、知り合いの軍人に頼んでハンコも作ってもらい、貯金通帳を造ったのである。

 

 

 

 

こうして、都合の悪い部分を無視したあげく結論はこうだ。

 

 

 

「友達に比べて私だけが、大金を持っているのは、都合が悪い」という文玉珠さん

言うまでもなく友達は「大金を持っていない」のである。

 

それを解説するのに

普通の慰安婦と同様にお金を稼いで貯蓄していた」というイ・ヨンフン

誰と同様だって?

やれやれだ。

 

(イ・ヨンフンは「慰安婦はみな商売で、金儲けしていた」という結論にしたいために、こうした歪曲を行っているのであろう)(後に文さんの同僚だったヒトミさんも通帳を造っているが、やはりチップを貯めたものだろう。金額は不明である)

 

 

        2、殴られ、蹴られた慰安婦の話を無視するイ・ヨンフン

 

他にも無視している部分がある。例えばコレだ。

 

騙されて連れてこられた慰安所で、逃げられない、と達観して貯金を貯めることに精を出す文玉珠さんの周りには、貞操を奪われ、複数の日本人兵士の相手をすることを苦痛に思っている女性もいた。

 

文さんの表現ではこうである。

 

望んで、性の相手をするわけではない。

 

 

イ・ヨンフン自身が述べているように、騙されて連れてこられて泣きながら抗議したのだ。

慰安所でも、ささやかな抵抗し、殴られ、蹴られる。

 

ところが殴られ、蹴られた慰安婦の話は、イ・ヨンフンにとっては都合が悪いようだ。

 

完全に無視している。

 

 

             3、自殺未遂の話

 

アキャブに行く途中のアケミさんの病死と友達の自殺については述べているが、自殺と言えば慰安所の生活がどのようなものだったかが、よく分かるこの部分は無視している。

 

 

 

解説は不要だろう。

「きついきつい」と言っていた友達が自殺未遂

たちの悪い嫌な兵隊もいて、「朝鮮ピー」と呼んだり、バカにしたり、サックを使わなかったり。

「八つ当たりする人が多かった」

 

こんなものに、騙して連れていくなんて、虐待としか言いようがないだろう。

 

アケミさんの病死の前に、友人が川に身を投げたこと(p81)をイ・ヨンフンは一応は述べているのだが、この本には慰安婦の生活がよく分かる部分として、他にも爆弾で左足を負傷したり(p95)、文玉珠さんが酔っぱらった兵隊にののしられ、暴行を受け、左腕を骨折したことなど(p99-100)など、タフな文玉珠さんでも苦しんだ様子が書かれている。イヨンフンは軍法会議の話は長々と語っているのに(23:50~25:50)、慰安婦が暴行を受けた話は、無視しているのだ。戦後、文さんは後遺症に悩まされ、不眠を訴え、夜通し泣き明かすこともあったという(p155)。こうした事もイ・ヨンフンの講義には出てこない。このようにトリミングを行いながら「慰安婦と兵士は最前線で苦楽を共にする仲でした」と黒田勝弘秦郁彦朴裕河ラインが宣伝してきた意見を述べている。

 

しかしそもそも、銃弾が飛び交う最前線に、婦女子を連れていくことが、どう正当化できるだろうか?

 

最前線であるアキャブには三か月間トラックに揺られ、 歩いて行ったという。その過程で、文さんの友人の一人は身を投げ、一人は肺結核で死んだ(p79-89)。その自殺した友人や肺結核のアケミさんは、自分でアキャブに行きます、と言ったのだろうか?そうではない。文さんの表現では「それは命令だった」のである。誰の?軍の命令だ(p78-79)。軍に命じられたので、病身のアケミさんもアキャブまで行進しなければならず、病気は進行し、死んだのである。

こんな風に、騙され、殴られ、虐待され、辛さに病死、あるいは自殺までした娘たちは、なぜこの仕事を辞めなかったのか?辞められなかったのか?

 

 それを考えるのが、人類に寄与する歴史学なのである。

イヨンフンには歴史家を名乗る資格などない。

 

 

 4、騙されて泣きながら抗議したものは「意志によるもの」とし、自分の意志で決めたものは「強要した」という。

 

 

前回、韓国の女性たちが騙されて連れてこられ、泣いて抗議したことを書いた。

 

それはイ・ヨンフン自身も述べている。

 

 

 

 

 

 

 

詐欺による徴集は実のところ、米軍資料や軍事裁判資料、当時を回想する日本人の著作によって裏付けられている。

 

 

 

泣いた女性も多い。例えば、自身も慰安婦として戦地に向かった菊丸さんは、

「横浜を出て神戸に寄って、それから韓国の釜山で韓国人の女性もかなり乗船しました。彼女たちは私たちと違って志願ではなかったようで、チョゴリを着て乗り込んできたのですが、「アイゴ、アイゴ」と泣くのがなんとも悲しくて……私たちもつられて泣き出しましたよ。」・・・と回想している。(平塚柾緒『知られざる証言者たちー兵士の告白』 p339ーp349)

 

自ら、「慰安婦になること」を志願したわけではなく、「看護婦の仕事」とか「工場の仕事」とかいう名目でだまして連れて行ったのである。

 

ところが、イ・ヨンフンによるとこれは自発的らしい。

 

こういう。

 

 

 

騙されて異国に連れていかれ、泣いて抗議したが、これは「彼女たちの意志と選択によるものだった」という。

この部分は、帰国しようとした文玉珠さんが警告のような夢を見て、慰安所に引き返すシーンを解釈しているのだが、ここで分かるのは「慰安婦としての職業生活が彼女たちの意志と選択」だったことではなく、ただ単に「引き返したのは意志と選択よるもの」というだけである。慰安婦の生活が「詐欺によって騙されてはじまったこと」はすでに結論ができているではないか?

 

恐ろしい解釈もあったものだが、他にも奇怪な解釈が加えられている。

 

 

なんと、文玉珠さんの家が「妓生という職業」を「強要した」というのだ。

 

 

しかし、そんな事が文玉珠さんの回想のどこにあるというのか?

 

ビルマ戦線 楯師団の「慰安婦」だった私 』で文さんはこう語っている。

歌うことが大好きな文玉珠さんにとって「妓生になる」という事は、「とびきりのアイデア」だったのである。

 

時代と状況の制約はあっても、明らかに自分の意志で決定している。

 

イ・ヨンフンは、書いてあることを完全に無視している。

 

そして、「騙されて連れて行かれた」ものを「彼女たちの意志と選択によるものだった」とし、「自分の意志で決めたもの」を「強要した」とする。

 

まるで逆というしかない。

 

「強制」とはどういうものか?理解できないのだろうか?

 

彼らは資料から事実を読み取らない。悲惨な部分は無視し、歪曲し、頭の中で造る自分の解釈を優先している。

 

だから、こんなおかしな慰安婦論になってしまうのである。